4巻で完結のラノベ。学生恋愛モノを幾つか読んできていて、社会人モノが無いかなと思ったらあったので読んでみた。ネタバレありとはいえ、あまりにも全部書きすぎるのはどうかと思うので、頑張ってぼやかしながら書いてみる。

 24歳の山瀬冬と水瀬糸、大学時代は付き合っていて卒業前に別れた二人が偶然出会って、そして恋人ではないけれど、話をしたりHをしたりしつつ……という話。Hする事へのハードルが結構低い。まあ、元恋人同士で今は独り身だしそういう事もあるかなと。この辺りはあれこれ理由つけてHしない学生モノとの違いかもしれないし、実際大人になると倫理観の違いはあれど、そこまで大きな話じゃないとも思うしね。だから、その辺りは気楽に読める。そこが問題じゃないからね。

 1巻はそんな感じで、何となく現実逃避をしながら上手くやっていけてる、これならまたヨリを戻していくのかな、なんて思ってた。

 読んでいて思ったけど、やはり学生の恋愛モノは未来がキラキラしてるというか、愛情があれば幸せってな感じだけど、社会人モノでしかもこれ毒親絡みで相当エグいから、読んでいて辛くなった。毒親に苦しむのは身近に見ていてよく分かっていたしね。それで歪んでしまうのも、だからこそそこから逃げ出せる相手への愛情が大事なのも……そしてそれが裏切られる事の辛さも。

 糸の気持ちは分かるんだよ。そこにしか希望が無くて、そこに全てを賭けて、その為に自分のやりたい事も我慢してきたのに、冬は「糸のことを嫌いになりたくないから別れよう」だからね、もう絶望でしかなかったのは分かる。青鬼が嫌いって話も全部繋がってる、毒親の呪いだよ……

 でもなぁ……そこからの4巻が。これは結構衝撃だった。そこまでする?と。ヤンデレというかメンヘラというか……糸が重い。でも、落とし所を作れなかった時点で糸もどうするか迷ってたんだろうし、そこがラストに繋がっていくんだけど、ギリギリだったと思う。愛憎紙一重。でもギリギリがあったからあそこに行ったんだろうし。

 そして冬は、そこに真っ向から向き合って自己嫌悪と絶望と苦しみを味わって。それでも諦めずに先に進んで。愛ってだけでなく、贖罪的な面もあったんじゃないかなって。3年越しで再会してやっぱりこの人だと思って、でも別れた後でどれだけ糸が苦しんでいたかを知って、そしてその原因にいきついた時……キツイ。

 これね、かなり冬に感情移入して読んだ後から胃が変なんだよね。今朝も3時半ぐらいに目が覚めて、そしてこの話を思い出したら一気に意識が覚醒して、胃が重くなって、寝れなくなった。考える事、思う事が多過ぎる。私も苦しめていたんじゃないかとか、でももうどうにもできないとか……これは自分語りでしかないから本の感想ではないからこれ以上書かないけど……

 この話は先に冬が25歳になって、そして糸が25歳になった日に終わる。ハッピーエンドなんだろうか。でもね、結婚とか子育てとか、そういう事も全部考えていかなくてはならない年齢で、二人の互いへの愛情や依存だけではなく、その先の生活も考えていく必要がある。そこに大きな価値観の違いがあった時、どうする?って事がどうしても付き纏う。

 一般的な……「普通」と言われる生活と、そうでない生活。それらを選択していく必要がある。そしてそれが「普通」から離れる程、大変な想いをする事にもなる。

 それでも相手を想って生きていく事を選択するのであれば、それは一つの幸せだと私は思いたい。

 苦しくても、一緒にいる事を選択するのであれば、それは一つの幸せだと私は思いたい。

 きっと、これから先もまた何か揉める事もあるだろうけれど、それでも、互いを向いて、互いを想って、ぶつかり合いながらでも共に生きていって欲しいなと思う。