最近、ラノベを読む率が上がってしまっている。今回は、Kindle Unlimitedで1巻2巻が無料で読んでいたんだけど、面白かったので最終刊の3巻をと見たら無料じゃなかったけど99円だったので、これは買う!と結局最後まで読み切った。

 高校生モノで、中学時代にある事件があり不登校になったが、祖母により歓楽街での宅配バイトをやりつつ高校に入った主人公の陽都と、品行方正な委員長の紗良の恋愛モノでもある。二人の出会いは学校だけど、意識するようになったのは紗良が夜の繁華街で全然違う格好をして、そして絡まれている所を助けた事から。

 何故、真面目な委員長がそんな変身をしていたのか、から始まっていくんだけど、紗良の親問題がなぁ……最終巻まで引き摺る事になるんだけど、親目線としてこうはなりたくないとしみじみ思う。

 でも、そんな親に育てられて、良い子であろう、親に見放されないようにしようとし続けてきたからこそ溜まったストレスからの開放としての変身、それを理解する陽都……なんだけど、紗良の心の追い詰められっぷりが読んでいて辛かった。陽都が理解して受け止めてやれたからこそ、笑えるようになっていったんだよね。

 そして一般的な子供がする事をあまりしてこれなかった事を陽都が教えてあげて。高校生ってまだ子供でもあるから、小学校の頃にやっていた遊びをやってみようよって事が、懐かしむだけじゃなくて、普通に自分も子供として楽しめたりするし。だから陽都が紗良に教えてやって、それを無邪気に楽しみにしてワクワクしたり、実際に遊んでみたらポンコツでむくれたり、そんな様子が可愛い。

 2巻ぐらいから映像制作の話が結構出てくるんだけど、学園モノでダンスを取るってのはポカリのCMみたいで格好良い。私はポカリのCMのイメージで読んでた。吹奏楽部も体育会系も、それぞれの普段の自分達で応援して、そこをきっちり決めて踊って、それを映像に収めて、結果としてダンス部も、アイドルコンテストも、良い方向に進んでいって……あそこはゾクゾクしたな。

 後半はそれぞれの未来をどうするか。「普通」を求められる陽都、「親の後継」を求められる紗良、それぞれ反発しつつ、自分が何をしたいか考えていって、そして二人の交際を経て、そこでした体験を元に自分なりの考え、軸といったものが出来ていって、それを親に真正面から向き合って言えるようになったのも良かったな。成長でもあるし、変化でもある。

 特に紗良の方は最早呪いじゃないかというレベルで母親の思いに縛られていたから、そこに真正面から向き合って、きちんと自分の意見を言えたのは良かった。陽都の祖母の肩書きに母親が気づいてそちらの理屈を潰せているという設定は、途中で予想はしていたけれど、それを武器に戦うんじゃなくて、母親が気づいたという形にしたのでまだ良かったかな。しかもそれを利用しようとする母親が、自分のそういう性格を改めて認知し、娘はそうでないという事も「理屈上では」理解できた訳だし。

 3巻という長さなので、気軽に読める。ただ、紗良に感情移入すると胸が苦しくなって辛くて仕方なくなる面もある。だから陽都と出会えて、そして素も変身した後も、全部好きだと言ってくれる事が、凄く心を安らかにして母親に対して自分の意見を言うのも良かったなぁって。親の考えを先読みして実現できるようにならないと自分がいらない子になってしまうという考え方から変わって、自分が思うように、好きな事を好きだと言えるようになっていくのが良かった。

 高校生という子供と大人の間の、まだ道が決まっていない、でも道を考えなくてはいけなくなってくる子供達の話だから、だからこそその周りを取り巻く大人達の存在も目に入るんだよね。商店街の人達が紗良の幼児時代の話をしてくれたり写真を見せてくれたり、陽都は映像制作現場の大人達の姿を見てあれこれ未来を描いたり……大人って子供達に影響を与えるものだよね、それが良いモノであれ悪いモノであれ。子供達が前を向いて夢を持って歩けるようにしてあげたいものだよ。

 ラストの花火を見ている二人が、来年の事も話していて……未来に幸せを描いていける二人が可愛いなと。良い読後感だったので、高校生の恋愛モノとかを読むのが嫌いじゃなかったら楽しめると思う。