タイトルが全てではあるが、「江戸前エルフ」が大好き。元はアニメからだったか漫画からだったか自信が無い。コミックDAYSに載ってて、連載雑誌が終わってからは完全にコミックDAYSに移籍になった。とにかく好きだって事を書きたいので、確実にネタバレは多くなる……ので、ごめん(笑)。

 話としては、異世界召喚されてそのまま祭神になったエルフのエルダ、そしてその巫女の小糸を中心に繰り広げられるコメディであり、エルダが江戸時代の文化の話を引き合いに出して色々説明してくれる……なんだけど、エルフは不老不死の設定があるからこその人情というか感情というか、凄く揺さぶられるものがある。それはセリフであったり表情であったり。

 エルダが基本的に「駄目な奴」なのが面白いし、巫女としてきちんと神事を行おうとする小糸に怒られてばかりのエルダの駄目っぷりが目立つようでいて、でも、氏子からは愛されるエルダというのがね。その根幹はシマデンの婆ちゃんのこのセリフかな。

私くらいの年になると、家族も連れもどんどんいなくなっちまうってのにエルダは変わらず高耳神社にいてくれる。やっぱし変わらないものがあるってのは安心するよ

 氏子の皆さんもそうなんだろうな。生まれた時にはエルダの所に宮参りして、事ある毎にお参りして、神事・祭事も色々あって。生活の中に高耳様たるエルダは存在してる。そいう意味では神という表現でおかしくないんだろうね。神通力とか無いけど、でも、そんなエルダを皆が好きで大事に思ってて、そして変わらない存在としての畏や敬があって。

 ゴールデンカエルパンツァー欲しくてスタンプラリーやって、いざ福引き引いてって話の時、既に5等引き当てちゃった二人はそれを知って福引きの所に行って景品返して、しかも全部5等が出るようにしてくれって頼んで、それが通っちゃうし(高耳様が来るのならって事だよね)。そして氏子の皆さんも引きこもりのエルダを分かっているからこそ、物陰からそっと見守って応援してるし(笑)。こういう関係性って良いよな。

 そうやって400年の間、氏子の皆を見送ってきたエルダだからこそ、だなって。時間の過ぎる感覚も違うんだろうし、生についての考え方も違うじゃないかって思いたくもなる。でも、エルダは人間に近い感性なのかなって思う。

エルダは…エルダはみんなが大好きだから、1人でいるんだ

 小糸がこの結論に辿り着くのが喧嘩した後ってのがね。そしてその小糸を探しに来るエルダ。引きこもりが60年ぶりに外に出るという。そういう繋がりとエルダからの小糸への思いってのがあるなぁって。

 こういう話ってちょくちょくあって、スカイツリーに登る話もそうだったなぁ。あの時はエルダが少し悲しそうに笑うシーンで、小糸が

エルダはたまに、こんな顔をして笑う。私はこの顔が、あまり好きじゃない

 って思うシーンがある。これはエルダが400年間、祭神として祀られながら見てきた人達との別れがあってこそ。それに無関心にも達観もできないエルダだからこそ、もの悲しく寂しい気持ちがあり、やるせなさがあり、そういう表情になるんだろうなって。

 エルダは歴代の巫女がいて、そして小糸が当代の巫女になって、唯一やり取りする相手として大事に思っていて、でも確実に自分より先にいなくなる。エルダの美しさに憧れて早く大人になりたい小糸と、まだ子供の小糸でいて欲しいと思うエルダと……どっちも大事に思う相手でありながら寿命の違いから全く逆の思いになってしまっているのが切ない。

 これは、アニメのオープニングでもしみじみ感じさせられる。最後の「らーらーららららー」の辺りで、エルダは全く変わらず、その横でハイハイしてる赤ちゃんから幼児に、小学生にそして今の小糸にって変わっていきつつ歩いてるシーンがその象徴だと思う。

 でも、小糸はもうそこの覚悟も出来たんだよな。エルダの部屋の整理でビデオテープが出て来て、それをシマデンで見せて貰って、自分が生まれる前の高耳神社、そして自分と同い年の母、全く変わらないエルダを見て……そのテープをあげようかというエルダに、ううんって断ってエルダに返すのは、自分が母親の思い出を持つよりも、ずーっとさよならしてきたエルダに思い出を残しておいてやりたかったからなんだろうなって。

 いすずとのやり取りも良かったな。エルダと自分、エルフと人間の関係についてもはっきり言い切ってるし。

「ねえ、小糸ちゃん。どうやったって、私らの方が先にいなくなるじゃん。それなら仲良くなんかしないで悲しい思いをさせない方がいいって思う時…ない?」

「あるよ。でもきっと…間違ってる」

 言い切れる小糸ががね、良かった。そしてエルダと小糸だけではなく、ヨルデと向日葵も、ハイラといすずも、それぞれ癖の強いエルフと巫女なんだけど、どちらも大事に思ってるのが凄く伝わってくる。皆、良いエルフ、良い子達ばかりだ。

 最新刊の9巻が今日発売されたよね。


 その中でパンニャとエルダの会話は、また、エルフと人間との関係、エルダの考えが見れて良かった。祀られても人の命に対して何もしてやれないから神社を畳もうとするパンニャに対して、歴代の巫女全員の話を一人ずつ名前を挙げてしていくエルダ……

私達はなにも救えないよ だけど 私達は誰も忘れない そうだろ?

 エルダのこのセリフが重い。忘れた方が気が楽なんじゃないか、楽しかった想い出は悲しい思いとセットになっているのだから、時間が経つにつれてどんどん重くなっていくんじゃないかって思うけれど、エルダは「忘れない」って言ってる。小糸によって少しずつ広がりが増えてるエルダだし、またもんじゃ食べに行ってるし、遂には文化祭にまで行く事に……迷子になってるけど(笑)。広がりが増えて行けば行くだけ楽しさとそれを失う悲しさがやってくるのが分かってて、それでも行くのはエルダなりの変化かもしれないね。

 この「江戸前エルフ」は漫画も良いし、アニメも良いんだよ。アニメがまた丁寧に原作を再現してくれてるし、間も良いんだ。絵も綺麗だし、声優さんも凄く合ってると思う。どうしても漫画の方が話が短いからアニメの方では繋ぎの絵とかも必要になってくるし、やり取りも少し変わったりするけど、引き延ばし感よりも丁寧さを感じる。

 オープニングもきちんと世界観表現してるし、非常に良いアニメになってる……お陰で何度も見てしまってる(笑)。オープニングだけでもずーっと見てるもんな。「運命の赤い糸~」で始まる歌も良いし「どうしたって好きなんだ」の所でエルダが小糸の耳をエルフみたいに長く引っ張るんだけど、凄く優しいの。そっと耳を摘まんで引っ張ってって感じで。こういう一つ一つが細かく描かれてて凄く好きなんだよね。

 ヨルデと向日葵、ハイラといすずも、日常のやり取りで如何にもなんだけど、でもそこに巫女の二人がとっても大事に思ってるのが伝わってくる。好きなんだなぁって。だからヨルデやハイラも自然に振る舞っていられる大事な相手なんだなって。

 これって結構良い話、しみじみする話になる設定が根幹にあって、時々そういう話をじっさいやる訳だけども、それ以外は大体駄目ルフとそれに振り回される巫女って話で笑えるのが良いんだよね(笑)。根幹設定部分は私の好きなテーマだから色々考えてしまうし、それでいて大体は笑えるという。絵も綺麗だし、本当に読むのが楽しい。この作品、大好きだわ。

 アニメ二期発表はまだかなぁ……(笑)。