『ダイの大冒険』における「勇者」という存在とは(via ネットサーフィン見聞記)

 利己的と利他的というキーワードでこの記事は進んで行くんだけど、その切り方は上手いな。ダイの大冒険はポップこそがもう一人の主役だろうというぐらい成長した。人間としては世界最強レベルまできた。バーン相手に啖呵を切るシーンは涙した。

 でも、初期のポップはヘタレだった。そこにちょっと共感する部分はあるけど、その共感は、勇者と旅する仲間にはなれない普通の人の感覚として。勇者に憧れ、その背中を追いつつも、結局は普通の人間の感覚があるから、恐れ、逃げる。そこは仕方無いよなと思ったりもした。

 それでもポップの場合は、結局戻っていく。最後までビビりな性格は変わらないけど、それでも進む。最初の頃は逃げつつも戻って来て戦ってたけど、後半はビビリつつも逃げ無かった。利己的なビビリと逃げ、利他的な進む心、両方を最後まで持ち合わせていたからこそ、あれだけ魅力のあるキャラになったんだと思う。あのポップがこんなに立派になるなんてなぁって。

 その弱さを、逃げる自分を分かっていて、周りがそう見るのも分かっていて、敢えて悪者になって独りになり、ダイを守る為に戦いに行く辺りからポップがもう格好良くて堪らなくなったんだよな。バランへのメガンテの前の

おれが死ぬとこ見ても まだとぼけたツラしてやがったら・・・・・・うらむぜ・・・

 このシーン、メガンテ、そしてダイの記憶の復活……この辺りの流れは凄かったよ。毎週どうしようかと思うぐらい次週が楽しみだった。勇者であるダイの復活ってのは勿論あるけれど、それを導いたのは弱いポップの強い心だった。

 ハドラーとの最後の戦いもそう。勇者ダイと戦いたくて最後の戦いを挑んで、そして敗れて……罠にはまった処からダイ達を助けようとして……冷静であれと言われてそう意識しいても、ハドラーを見捨てられなかったポップ。あの時はもうハドラーの祈りがね、ポップだからこそハドラーが思った言葉。

・・・神よっ!!人間の神よっ!!!

魔族のオレが・・・はじめて 祈る・・・!!!

もし本当に・・・おまえに

人命を司る力があるのなら こいつをっ・・・!!

この素晴らしい男だけは生かしてくれっ!!!

オレのような悪魔のためにこいつを死なせないでくれっ!!!

・・・神よッ!!!!

 こんなん、泣くしかないじゃんね。

 最後のバーンとの戦いもそう。勇者であるダイですら心が折れて立ち上がれなくなった中、ポップはいつも通りだった。立ち上がってバーンに向かって言い放つシーンは堪らなかった。これ、最高の名台詞だと思う。

あんたらみてえな雲の上の連中に比べたら おれたち人間の一生なんてどのみち一瞬だろう!!?

だからこそ結果が見えてたって もがきぬいてやる!!!

一生懸命に生き抜いてやる!!!

残りの人生が50年だって5分だって 同じ事だっ!!!

一瞬・・・!!だけど・・・閃光のように・・・!!!

まぶしく燃えて生き抜いてやるっ!!!

それがおれたち人間の生き方だっ!!!

よっく目に刻んどけよッ!!!

このバッカヤローッ!!!!

 この言葉で、ダイが立ち上がる訳だから。勇者であるダイが、あの弱虫で逃げてばかりいたポップの勇気のある言葉で立ち上がる。利己的なポップが、人間の生き方を語る。自分はそうだ、人間もそうだ、そういう生き方をすると言い切った。これはもう利他ですら無いと思う。

 では、この記事にあるように、ダイが勇者ではなくてポップが勇者じゃないかと言われると、やっぱり違う気がする。勇気があるのはポップだったけど、勇者として、皆の先頭に立つのは、最後まで超常的な力で戦えるのは、やはりダイだったと思う。でも、そんなダイですら心が折れるような中で、人間として立ち向かえたポップは勇者パーティに必要だったし、なんでもできるダイよりも更に勇気を持った人間だったんだと思う。

 弱いからこそ逃げて、心が強くなっていくのも、その弱さで追い詰められた時に少しずつ変わっていくという形でポップは格好良くなっていった。そんな人間くささと、それを乗り越えて、ダイという人間でない大事な友人を信じて、自分の全てを出したポップは、本当に格好良かったし、この漫画で一番好きなキャラだったと言い切れる。

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